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【ネタバレあり】横溝正史・長編「不死蝶」を紹介

「不死蝶」は長編ですが、都会(東京)でも岡山でもなく信州地方でおきた事件です。とてもめずらしく署長も初登場。時期としては犬神家の一族の後の話になります(だから名前も通っている)。2つの旧家が争う村、旧家の中の恋人、鍾乳洞、20年以上前の事件八つ墓村と女王蜂のようなシチュエーションだと思いました。実写化は少なく、古谷一行氏で2回映像化されたぐらいです。

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目次

不死蝶のあらすじ

「蝶が死んでも、翌年美しくよみがえるように、いつか帰ってきます」23年前、謎の言葉を残し姿を消した一人の女性。鍾乳洞で起きた殺人事件の容疑者だった彼女は、成長した娘と共に疑いをはらすべく、因縁の地に戻ってきた。だが彼女の眼の前で、再び殺人が起きる。被害者の胸には、当時と同じく、剣のように鋭い鍾乳石が……。迷路のような鍾乳洞で続発する殺人事件の謎を追って、金田一耕助の名推理が冴える!

登場人物作中の役割
金田一耕助私立探偵。
神崎射水警察署署長
矢部杢衛矢部家当主。今回の事件の依頼人。玉造家を憎んでいる。最初の被害者。
玉造乙奈玉造家当主。昔杢衛とは恋仲だった
鮎川マリブラジルのコーヒー王の養女。君江の娘。君江と一人二役を演じる。矢部慎一郎と玉造朋子の子ども。
鮎川君江マリの母親。玉造朋子と瓜二つ。正体は玉造朋子で既に死んでいる。
矢部慎一郎杢衛の長男。学者肌。かつて玉造朋子と激しい恋をした
矢部峯子慎一郎の妻。三人目の被害者。古林の元恋人。
矢部都慎一郎の娘。玉造康雄と恋人。
宮田文蔵峯子の兄。矢部家の番頭格で優秀な男性
古林徹三満州から引き上げてきた矢部家の親戚筋の男性。二人目の被害者。かつて峯子とデキていて強請っている。
玉造朋子乙奈の娘。慎一郎と激しい恋をした。23年前の事件の犯人とされ、底なし沼に投身自殺をした。鮎川君江。
玉造康雄乙奈の孫で朋子の甥。都と恋人。
河野朝子マリの家庭教師。君江の真似をした
矢部英二杢衛の次男。23年前に鍾乳洞で殺される

金田一は汽車に乗って射水(いすい)に向かっていた。射水の有力者矢部杢衛(もくえ)より、ある依頼を受けたからだ。老人らしく杢衛からの手紙には金田一が受けてくれる前提で書かれていた依頼書には幾分かの前金も入っていた。そして金田一宛に「射水に来てはならない」という一種の脅迫状が届き、それがかえって彼をワクワクさせる。従って東京で事件を解決した金田一は静養がてら射水に向かうことにした。汽車に乗っていると、隣の百姓に話しかけられ射水に向かうと話すと、かつてあの場所で起きた事件の話をされる。反対側に乗っていた頬に傷が付いた男が話に割り込み、23年前に矢部家の次男が鍾乳洞で殺されたこと、犯人は敵対している玉造の娘の朋子で、行方知れずになったことを事細かに話した。彼は事件の第一発見者で古林徹三といった。

コーヒー王の養女・鮎川マリ母娘

射水にはブラジルのコーヒー王の養女・鮎川マリとその母君江、家庭教師の河野朝子やボディガードなど一行が逗留していた。逗留先は矢部家と二大勢力にあたる玉造家。射水にある教会に君江がやってきて人集りが出来ている。娘のマリは一緒ではないようだ。教会から出てきたマリを見る群衆の中から「朋子!」という男の声が。その声は汽車で出会った古林徹三だった。
マリにも金田一同様脅迫状が届いていた。マリはそれを仕舞い、玉造朋子の姪・由紀子から23年前の事件についておおよその話を聞いた。矢部家の慎一郎と玉造の朋子は激しい恋をして駆け落ちまで考えていた。それが発覚し慎一郎は閉じ込められ、鍾乳洞で待っている朋子を慎一郎の弟の英二が引っ立てようと中に入っていた。しかし英二は鍾乳洞で殺されて、朋子の着物の半袖が握られていたが当の朋子の姿が見当たらなかった。当時の人々の話ではすぐ側の底なし井戸に身を投げたのでは、という事だった。
矢部家の門を開けた金田一は杢衛より詳しい依頼内容を受ける。それは今玉造家に逗留している鮎川君江が23年前に行方不明になった玉造朋子ではないか調べて欲しいという。既に23年前の事件は解決したのでは無いのか、と金田一が言えば、朋子は死んだのでは無く鍾乳洞から逃げたに違いないとと杢衛はきっぱり言う。杢衛は玉造家が絡むと憎悪をむき出しにする男だった。

プロテニスプレイヤーの田代が射水にやってくる。田代は玉造家の康雄の友人で、毎年夏になると射水にやってくる。
マリ主催のパーティが夕方から開かれている。射水の有力者がポツポツと揃う中、マリの母親の君江は姿を見せない。杢衛はこの機会に暴いてやろうとマリに責っ付くが、マリはお母様は加減が悪い、今これるか聞きに行っているなど誰もが見ても明らかに時間稼ぎをしているように思えた。
その裏で、矢部家の娘の都と、玉造家の息子の康雄が密会していた。親世代のロミオとジュリエット事件を聞いているにもかかわらず、血は争えないのか子世代も二つの家の人間が求め合っている。

食事の最後まで君江は現れなかった。杢衛はずっと君江の登場を望んでいるが、マリが今に来ますからと冷たく遇っている。それがかえって杢衛の中で「君江=朋子」という方程式を強固な物にしてしまい、周囲が宥めるのも聞かずに挑発しながら君江を出せとマリに食ってかかった。すると都がやってきて君江なら鍾乳洞に向かっていくのを見た、雲の上を歩くような感じだったといえば、マリは君江が夢遊病を起こして鍾乳洞へ入ってしまったのでは、と話す。その後を康雄が追っかけているのも聞き、田代・マリ・マリの護衛のカンポ・署長・杢衛・由紀子・金田一の七人が鍾乳洞に向かうことになった。
田代はふらふら歩く夢遊病者が、こんな暗い鍾乳洞を迷わず歩けるのか、ネコのようだとと言えば杢衛とせせら笑い、マリを挑発する。一番最初を田代が歩き、最後を金田一が歩く。女性の靴跡と、男性のサンダルの跡が見え、確かに君江と康雄が鍾乳洞の奥まで入っていったのがわかる。蝙蝠の洞窟まで進み、更に奥に進むと足跡が途切れてしまっていた。ここから先は迷路のようになっている。さてどうしようかと言えば、マッチの吸い殻を発見し、左側の底なし井戸のほうではないかと言う。杢衛は君江を朋子と認識しており、迷わずこれたのは彼女が朋子だからというニュアンスで毒々しく笑う。左側の洞窟を進んでいくと、誰かがいた気配があり、灯りが消えた。誰かが引き返す足音が聞こえたのが田代と署長が後を追う。男の人だったと言えばマリとカンポも後を追い残されたのは金田一と杢衛と由紀子の三人。

杢衛は立ち止まらず前進して底なし井戸の方面に向かう。近くを金田一が探している中、向こう岸の底なしの井戸に君江らしき女性の姿が見え、杢衛は朋子だと叫び由紀子の懐中電灯を奪い、走って行った。由紀子が逃げてと朋子に向かって声を上げると朋子はカンテラを消し、周囲は真っ暗になる。後を追いかければ、マリとカンポに出くわした。杢衛が朋子を見つけたと走って行った事を話すと、怒りに満ちた杢衛の罵倒する声が反射して聞こえてくる。すると今度は杢衛のひぃっ!とした悲鳴と女性の声が聞こえた。
マリ達と一緒に底なしの井戸に向かえば、足が出ていて金田一が灯りをもらって確認しに行く。そこにはとがった鍾乳石で身体を貫かれて倒れている杢衛の姿があった。彼の手には君江が被っていた紗のベールが握られていた。

第一の事件

マリは君江ならきっと自宅に戻っているという。そして一緒に聞こえた女性の声は自分の母ではないときっぱり言った。崖の向こう側に田代と署長の姿が見え、男も康雄も見当たらなかったので困っていたが道に迷って戻り方が解らない。カンポと由紀子が一緒に迎えに行き、合流すれば二人が殺人があったことにおどろいた。なおこの事件は「犬神家の一族」の後の事件のため、犬神家の事件を知る署長は金田一に全幅の信頼を置いている。
金田一が殺人の大まかな状況を話せば、署長は君江が杢衛を殺したのかと尋ねる。金田一はソレを否定し、下記の通りの事実を述べた。

  • マリに似た婦人を見かけた
  • 彼女を見た杢衛が朋子だと言った洞窟の中に飛び込んだ
  • 金田一と由紀子が後を追ったが途中でマリとカンポに遭遇した
  • 4人で杢衛の後を追っている最中、杢衛が誰かを捕まえたらしく、口汚く罵っているのを聞いた
  • 女の悲鳴が聞こえ、続けて杢衛の叫びが聞こえた
  • 駆けつければ杢衛が死んでいた

ここまで聞けば明らかに君江が犯人だという状況証拠になっているが、金田一は事実をまず並べてみる主義なので確認したとのこと。田代達が追った男の姿も確認できていない。君江らしき女性はどこにいったのかと言われれば金田一は三つの可能性があると言う。

  • この底なしの井戸に飛び込んだ
  • 洞窟内の脇道のどれかを使ってやり過ごして逃げた
  • 向こう側の崖の洞窟の先から逃げた

由紀子に聞いた第三の入り口は、矢部家・玉造家の出口ではなく、教会の後ろの山に出られる。その入り口は23年前にはわからず、事件の後に発見されたという。怪しい男の声も第三の入り口から風に乗って聞こえてきたので、署長と田代はその入り口から出て教会の方面に向かう。戻ってきた田代はその声は康雄ではなかったといい、代わりに入り口から出てきたのは教会の神父とその腕に捕まっている頬に傷がある男……古林徹三だった。神父は古林以外には誰も会わなかったと話した。

田代と由紀子が警察や医者を呼ぶことになり、一足先に鍾乳洞から外に出て、パーティ会場にいる人々に知らせた。話を聞いた峯子は、元々こない予定だったが都が心配になったので来たということで由紀子にネチネチと言う。恥知らずな物言いで甲高い声でキーキー言う峯子に、慎一郎と都も怒った。町長が話しに割り込み、杢衛が死んだことを尋ねる。田代は物干し竿と毛布で担架を作っている間、人々が代わる代わる二人に質問するも、複雑な状況を加味して二人は黙秘する。康雄の姿が見えないと峯子が鬼の首を取ったようにキーキー言うと、玉造家の当主・乙奈が康雄と共に登場した。乙奈は康雄は自分と一緒にいたという。峯子も乙奈相手には強くでれないようでそれっきり黙ってしまった。
医者と警察に連絡しつつ、田代が担架を完成させる。杢衛の所に行くと田代が立ち上がると慎一郎も向かうと言った。同時に乙奈も行きたいと言い、二人が代わる代わるおんぶすることになった。

杢衛がいた底なしの井戸に乙奈たちがついたとき、乙奈は杢衛の屍体の側に這い寄る。二家の多大なる憎悪を知っている署長は乙奈が杢衛を傷つけるかと思い、静止しようとしたが慎一郎が横から止めた。乙奈は杢衛の屍体を見て啜り泣いた。

「おたがいに、長い、長いたたかいじゃったな。そなたは生涯、わたしを憎みつづけてきなさった。わたしはまたその憎しみに負けまいと、魂をやぶるような苦しみにも、骨をつらぬくような悲しみにも耐えてきました。それもこれも家という一字のためじゃった…」

不死蝶 P149~P150

「しかしその長い長い苦しみも、悲しみも終わった。そなたもわたしもたいする憎しみを忘れてくだされ。そして、墓のしたで静かに、やすらかに眠ってくだされや。わたしもおっつけいくほどのにのう」

不死蝶 P150

むせび泣いていた乙奈は慎一郎に、杢衛の目を閉じさせてやりたいと願う。慎一郎は父も喜ぶと賛同し、乙奈は瞼を眠らせた。古くからの住民は杢衛と乙奈が激しい恋に落ち、杢衛は全てを捨ててでも乙奈と結婚することを望んだが、乙奈は家を守るため、別の男と結婚した。この事で乙奈に裏切られたと思った杢衛は乙奈を、玉造家を酷く憎んだという。

古林の話に寄れば、自分は慎一郎の又従兄弟で23年前もこの射水に在籍していた。英二の死体の第一発見者は自分で、その後満州に行った後、戦争後に一文無しで戻ってきた。それを話して受け入れてもらった身だと言えば、慎一郎は無言だが峯子はそうですね、とどこか笑顔だった。ここに戻ってくるときに君江を見たが、等しく朋子であった。こで底なしの井戸が気になって見に行ったときに、田代達と出くわした。急いで逃げるときに神父と遭遇して捕まったという。
鍾乳洞を捜索していた刑事より、女性の衣類が底なしの井戸近くで見つかったという。23年前同様身を投げたのではと思った矢先、峯子がそんな筈はないと言う。第三の出口から抜け出して朋子を可愛がっていた当時の神父と一緒にブラジルへ逃げ出したのに違いないと杢衛が言っていたと語った。

矢部家の状況

依頼者の杢衛が死んでしまったので、どうするべきか悩んでいた金田一に対し、慎一郎は杢衛を殺した犯人を見つけるまで逗留して欲しいと言ったので従うことに。矢部家を動かしているのは杢衛でも慎一郎でも峯子でもなく、峯子の兄の宮田文蔵だった。宮田はTPOを弁え、才覚もある男性だが引き上げ者の一人で妻子もおらず矢部家にいる男性である。戦後の農地改革で没落した玉造家に対し、山林を多く持っていた矢部家は没落から免れた。山林から鉄平石が多く取れた。工場を建てて鉄平石を採掘し、送っている事業を行っている。その工場長を務めているのが宮田だ。宮田は妻を持たないが愛人がいるらしい。そして姪の都を大層可愛がっている。

都自身は仲の悪い両親に挟まれて窮屈になっている。そこに古林という人相の怪しい引き上げ者が入ってきて尚更だ。年相応の嗅覚で本能的に古林を都は信用ならないと思っている。金田一も目の前で殺人が発生したことに彼のプライドが許さず、解決するまで滞在する様子だ。
金田一は峯子にどうして23年前に朋子が第三の出口から抜け出して神父と逃げたと言ったのか尋ねれば、杢衛がそう考えていたこと、23年前のパウル神父と朋子が懇意にしていたことを羅列した。そしてブラジルに帰還する際に朋子を連れていったのではないかと。そこで第三の出口が事件の1年後に見つかったことを金田一は知る。

23年前、峯子と文蔵は矢部家の厄介ものになっていた。杢衛が若い頃に兄妹の父親に世話になった際、自分の息子とそちらの娘を結婚させると約束し、二人は婚約者になっていた。古林も若い頃は毎年矢部家に逗留しており、杢衛が若者を迎えいれる性格だったためだ。
警察が鍾乳洞を探索していて三日目になるが君江の姿は見当たらない様子。

君江が行方不明になり五日が経過した。警察は青年団の力も借りて本格的に鍾乳洞を探索する事を検討している。マリはというと、母は必ず帰ってくると落ち着いている様子。ブラジルで親子と出会っている田代は、君江は愛情に満ちた女性でそんなことをする女性では無かったという。そして日本で再会したマリも、ブラジルの時に比較して人が変わったように落ち着いていて、田代を徹底的に避けている。
金田一が教会に行けばニコラ神父が困り果てていた。話を聞けば、様子を見に来ているお作が鐘楼でベールを被った女性の姿を見たという。君江かどうかと尋ねれば遠くにいたしベールを被っていたのでわからなかった。急いで鐘楼に駆けつけたが、もぬけの殻だったという。このことはお作にも口止めしており知っているのは金田一だけ。そしてニコラ神父は君江は絶対にここにいないと言い張った。

教会にマリの養父のゴンザレス氏が多大な寄付をしていたのでニコラ神父はマリを知っていたが、会ったのは初めてだった。マリの逗留先に玉造家を選んだのもニコラ神父だった。
古林を捕まえたときの話を聞けば、元々パーティに参加する予定だったが信者の一人が病気になり見舞いに行っていた。それからパーティに向かおうとし、鍾乳洞の入り口から通った方が近道だと考え、入り口に向かった。ニコラ神父がマリに鍾乳洞の道を教えていたのでマリは定期的に鍾乳洞の道を使って教会にきたという。なお家庭教師の河野も知っている様子。
ニコラ神父は懐中電灯をもち底なしの井戸まで来れば、古林がいたので捕まえたという。あの場所は隠れるところもあったが、さきに自分が古林を見つけたので観念したのではないかとニコラ神父は言う。見つかった直後、懐中電灯をたたき落とし、小競り合いになり腕にかみついたので声を上げた。その声に気がついた署長と田代が駆けつけ三人で古林を捕まえた。一本道なので逃げ場はないが横の広さはそこそこある。そのため、古林は洞窟の壁に張り付けばやり過ごせたのに真っ正面に立っていたのが不思議だった。その後鐘楼や第三の入り口を確認したがこれといってめぼしいものは発見されなかった。

昏迷の事件

金田一は昏迷の泥沼の中にいた。事件が一向に進展しないのもあるし、君江という女性が本当に朋子なのかわからない。彼の悩みはこの君江と朋子に重点を置かれている。警察も君江の行方を手配し、駅や鍾乳洞の入り口を厳重注意しているが全く網に引っかからない。君江は食料を鍾乳洞に運び込んで中に隠れ、監視の目が緩んだときに逃げ出すのでないかと署長は考える。マリはといえば君江を信じている様子を崩さない。

鍾乳洞狩りは三つの入り口に分かれて侵入することになった。警察や青年団以外には田代と康雄、慎一郎、古林、文蔵、金田一が参加した。田代は流石に一週間以上女性が中にいるのは無謀なのでこの鍾乳洞狩りが無駄に終わると思っている。井戸に身を投げるのにわざわざ服を脱ぐ必要があるか、変装して逃げたに決まっているという峯子の説を口にした。鍾乳洞を探索するうち、署長は最初に追っかけていった康雄が何か隠していると踏み、問いただそうとしたときに別働隊と合流した。
金田一は古林に23年前の事についてもう少し詳しく聞いてみた。鍾乳洞を知っているのかと言えば、あまり知らない様子。英二が殺されたときも英二の後で向かったので一緒に行けばよかった悔いていると。慎一郎達とも合流し、渡満した後も音信不通になり、帰ってきた途端事件が発生するのが異常だと思った。また杢衛が鍾乳洞の中で古林の姿を見つけたとき非常に驚いていた。古林はあんな時刻に鍾乳洞で帰ってきた男がいるなら驚くだろう、こっちも誰にも見つかりたくなかったと答えた。江藤警部補とも合流し、ここからは二人組に分かれて捜索したほうが理に適っていると考え、古林と別れ金田一は慎一郎と組むことになった。

慎一郎は古林が嘘をついていると話す。朋子と通じているとわかったとき、自分は部屋に閉じ込められた。その部屋からは矢部家の鍾乳洞の入り口がよく見えるので怒りで見張っていた。直後、英二が家から飛び出して鍾乳洞に向かって入っていった。三十分経過しても英二が帰ってこないので杢衛が奉公人を集めて協議しているところに、古林が裏口からやってきたという。慎一郎はずっと鍾乳洞の入り口を見ていたが、古林はおろか誰も出てこなかったのだ。

第二の事件

奥の方からけたたましい怒声と悲鳴が聞こえたので二人は急いで駆けつける。それは杢衛のときのような断末魔だった。走ってみれば田代や康雄、数人の捜索員と合流する。三つ股になっているうち、田代達がやってきた道と金田一がやってきた道で、残った道があったのでそちらを歩くことに。逃げ水の窟と呼ばれる水が流れている場所に、足跡が見つかったのでそれぞれ足跡を追って歩いて行く。水辺の所に一人の男性が倒れていた。それは別れたはずの古林徹三だった。彼は鍾乳石で心臓を抉られていて杢衛と同じように死んでいた。

古林と組んでいたのは文蔵だった。河のほとりに女の靴跡があったので文蔵はこれを追ったのではないかと金田一は言う。文蔵の話では真っ黒なスカーフもといベールを被った女性で顔が見えなかった。文蔵は転んで膝を打った様子で膝の部分のズボンが裂けている。悲鳴が聞こえ追いかけている最中に転んだので追いかけるの事が出来なかった。無論、この場所の大捜索も行われたが、鍾乳洞の広さを知るだけだった。

ニコラ神父に聞けば、鐘楼の幽霊はその後現れないらしい。ただ君江のものと思われるコンパクトを渡され、これを彼女に渡して欲しいと言う。ハンカチでそれを包み、金田一は了承した。
マリに会い、金田一は君江がどこにいるか本当のことを言わないからだと話す。マリはおおよそ見当が付いているならどうして警察に話さないかと言えば、証拠がないから話せないからだと金田一は言う。なので証拠を渡して欲しいとも。それに関してまだ待って欲しいと自分はとある計画に全力を注いでいて、もうすぐ誰かが引っかかりそうだからと。金田一は了承した後、白いアート紙を渡すとマリに手に取らせ、このアート紙と同じ脅迫状が自分の所に来ているので確認して欲しいと言う。マリは自分の所に来ている脅迫状を見せた。

マリの部屋から出た金田一は署長に会う。署長の話では、杢衛が殺される時間文蔵にアリバイが無かったとのこと。そして金田一はアート紙とニコラ神父から受け取ったコンパクトを渡し、双方にある指紋を採りだして比較して欲しいとのことだった。コンパクトにはニコラ神父と金田一と女性の指紋、アート紙には金田一と女性の指紋が付いている。このことは内密にして鑑定して欲しいと頼んだのだった。

署長からの鑑定書を見て、嬉しそうに見つめる金田一はマリに手紙を送った。マリから長い手紙が届いたのがそれから数日後。それは期待していた内容のうえ、一種の高揚感と戦慄だった。大事なところを何度か読み直して考えている最中に峯子が果実を持って入ってきたので、慌てて手紙を隠す。

峯子は杢衛が朋子が第三の入り口から出ていったこと説を信じており、街の人々もそれを知っていた。峯子もその説を信じていた。峯子は英二が殺されたとき岡林という近所の街の親戚に遊びに行っており、夜遅くに英二が死んだことを知ったと言うのだ。そして峯子がマリの手紙について一言も話さなかったのは、それだけ興味を持っていることに他ならない。

マリの手紙

マリの手紙によれば、コンパクトとアート紙の鑑定書を見て、そこには若い女性の同じ指紋があったことを知り、金田一が自分の計画を看破したことを証明したことをたたえていた。その指紋にはマリの指紋がついており、マリが君江とマリの一人二役を演じていたことを暴露した。この射水の町には君江はおらず、マリや河野が代役を務めていた。君江は既に亡くなっており、日本に来る直前で死んでしまった。

杢衛や古林が疑っていた通り、鮎川君江は玉造朋子だった。鍾乳洞をさまよい歩いていた朋子は第三の入り口を発見し教会に出てパウロ神父に状況を説明。朋子を深く愛していたパウロ神父は朋子を密かに連れて日本を脱出する事に。朋子はブラジルに渡る前に書き置きを残し、ブラジルに行く。朋子はスペインからブラジルに行き、名前を鮎川君江と改めてマリを生む。そのためマリの父親は……。
パーティの時の鍾乳洞突入の時に君江を演じたのは河野だった。河野は中に入ると底なしの井戸で扮装を脱いで置き捨て、パーティに戻ってきたというのだ。しかし河野の後をつけてきた康雄がこのトリックに気付いてしまった。お芝居に気付いているにも関わらず沈黙を貫いているのはマリの真意を測りかねているためである。

母親の再生を使ったのは23年前の犯人に衝撃を与えることが目的だった。今回のことに関して杢衛が死んでしまったことは深い悲しみと同時にこの上ない憎悪と復讐に芽生えている。自分は素人なので事件の謎を解き明かすことは無理だが、女の勘から犯人は23年前の事件の犯人と同じだと確信している。
犯人はまだ鮎川君江が架空の人物と気付いていない。その証拠に鐘楼に姿を見せ、その女性が鍾乳洞を徘徊して新たな事件を引き起こすのではないかと踏んでいる。

またマリは鍾乳洞を探索し、遺留品を捜し、ついに物的証拠を見つけた。それをお見せしたいから明日10時に底なしの井戸で待っている。必ずきて欲しいとのことだった。

ゆきんこ

マリが発見した物的証拠とは?続きが気になる人は原作を読もう

\ 不死蝶 /

「不死蝶」のネタバレ

わたし、峯子好きじゃないんですよね。

「不死蝶」の犯人のネタバレ

矢部杢衛・古林徹三を殺した犯人は矢部峯子です。矢部峯子を殺した犯人は宮田文蔵です。

杢衛を殺すつもりはなく、密会を目撃され激しく罵倒されたため、このまま帰らせてはいけないと古林と峯子が共謀して杢衛を殺害します。

古林がニコラ神父の前に姿を見せたのは、峯子を庇い彼女が逃げ切るための時間を稼ぐためでした。
鐘楼の幽霊も君江に罪をなすりつけるために峯子が演じただけでした。

「不死蝶」の犯人の動機のネタバレ

古林との密会を目撃されたから&強請られたので口封じ(峯子)・都のことを思って峯子を殺害し自殺しました。

文蔵は峯子が杢衛と古林を殺害したことを悟り、可愛がっている都を「殺人犯の娘」よりも「殺人犯の姪」にするため、峯子を殺し遺書を残してすべての罪をかぶって自殺します。

23年前の事件の真実

矢部英二を殺害した真犯人は古林徹三と矢部峯子です。朋子が鍾乳洞で慎一郎を待っている間、古林と峯子は密会していました。朋子に逃げられ半袖を持っていた英二ですが、その帰りに二人の密会を目撃したため、口封じのために殺害されます。

朋子は杢衛の予想通り三個目の鍾乳洞で抜け出し、ブラジルに帰る神父と一緒にブラジルに逃げます。そこで職を転々としている中でマリを生みます。コーヒー王のところで働き、コーヒー王に求婚されますが慎一郎との恋に敗れた朋子は受け入れることができませんでした。コーヒー王はそれを受け入れ、マリを養女とします。朋子はマリと日本に帰る前に心臓発作で死んでしまいます。

そして、日本に来た後の君江(朋子)はマリと河野が変装していました。

「不死蝶」のまとめ

信州地方って珍しいよね。金田一の中では珍しい一人二役だったし(あとは病院坂ぐらい?)犯人も予想が付いた人物のようで、わかりやすい作品だと思いました。というか皆いなくなった矢部家どうするんだろう。学者肌の慎一郎が盛り返すのは難しいだろうし……マリの援助でなんとかやる感じ?

あと真犯人がクソッタレに近い。

浅田さん

23年前の事件と今回の事件の犯人が一緒(?)の時点で相当犯人絞られない?

ゆきんこ

勘が鋭い人は古林が死んだ時点で気付いたんじゃないかな

不死蝶はこちらから!

画像はこちらよりお借りしました

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