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【ネタバレあり】横溝正史・金田一シリーズ!短編集「毒の矢」を紹介

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2023年4月にNHKの特番で「犬神家の一族」の特番が決定しました。2016年の獄門島から続く吉岡秀隆さん主演のシリーズ第四弾で脚本は「アニメ版ジョジョの奇妙な冒険」「タイムレンジャー」「実写版美少女戦士セーラームーン」等で大人気の靖子にゃん小林靖子さん。実写でやり尽くされたと言ったと過言でもなく、市川崑監督の映画版(1976年)と比較されるのが常の「犬神家の一族」の実写版ですが、果たして今回の特番ドラマは無事原作再現がなされるのでしょうか。

ゆきんこ

市川崑監督の犬神家の一族であの人の正体がまるまるカットされて以来、ずっと忘れ去られているので、今回こそはあの人を出してくれるんじゃないかなと思ってる

あの人って?

ゆきんこ

青沼菊乃

今回の短編集「毒の矢」は2022年4月に復刊していて、「毒の矢」「黒い翼」を収録しています

目次

毒の矢

高級住宅街でもある緑ヶ丘町一帯に、奇怪な密告状が舞い込み始めた。差出人は黄金の矢と名乗る謎の人物。たちの悪いいたずらと笑っていた住人も殺人事件が起こるに至り、恐怖のどん底に叩き落された。被害者はアメリカ帰りの富裕な女性で、背中に彫られたトランプちらしの刺青のうちハートのクイーンの部分を、からす羽根の矢が深々と刺し貫いていた!
金田一耕助の名推理が冴える名作ミステリの表題作に「黒い翼」も収録。

「毒の矢」より

事件の始まりは緑ヶ丘に住む人気ピアニスト「三芳欣造」氏のところに届いた細君の不貞の中傷手紙から始まります。この手紙は「宛名違い」の手紙で本来は「三芳新造」氏に届く予定でした。最初はいたずらだと思っていた夫婦も、新聞を切り抜いた手紙が三通も届き、手紙の中には金品を特定の場所にうめろとという脅迫状もありました。

そして的場夫人が三芳夫婦ら関係者を呼んで「今日びっくりすることがある」と話していたにも関わらず、当事者が殺されてしまったことから事件が始まるのです。

登場人物作中での立ち位置
金田一耕助私立探偵
三芳欣造有名なピアニスト。金田一に「黄金の矢」の手紙の依頼をした。
三芳恭子欣造の後妻。欣造と同じピアニストで教室を開いている。
三芳新造中傷手紙で書かれた本当の宛先の人。画家。庭いじりが趣味
三芳悦子新造の妻(若い)。奈津子と同性愛の関係にあると手紙に書かれる
的場奈津子アメリカ帰りの富裕な女性で寡婦。天真爛漫な同性愛者。事件の被害者。元サーカスの劇団員で旦那は団長。
的場星子通称「ボンちゃん」奈津子の養女で小児麻痺で両足が不自由なため、車椅子生活を送っている。恭子のピアノ教室の生徒。一度殺されかけるが一命を取り止める。奈津子の私生児(父親は不明)
三津木節子星子の家庭教師兼看護師
佐伯達人節子に惚れている
八木信介牧師で的場家の家の手配などをした後見人。奈津子の旦那の従兄弟で星子以外では唯一の遺産相続人。
三芳和子欣造の娘。星子の友人
※「毒の矢」の犯人のネタバレ

犯人は「三芳新造」と「三芳悦子」の二人。奈津子は性の悶えに苦しんでいる(持て余している)ところを悦子の巧みな誘惑にのせられすっかり彼女に入れ込んでしまい、悦子に言われるがまま財産を少しずつ悦子に渡していた。

黄金の矢はこの二人が奈津子から金品を更にもらうために編み出された架空の存在で、奈津子は黄金の矢と悦子、それぞれから二重に搾取されていた。

※「毒の矢」の犯人の動機

動機は黄金の矢(三芳夫婦)の指示で奈津子が埋めた金品を新造が掘り起こしているのを奈津子にみられて暴露されるのを恐れたから。新造は常に馬糞や腐葉土がはいったバケツをもって住宅街を歩いており、そのバケツの中に埋められた金品があってもおかしくない。奈津子は八木に「自分は騙されていて、脅迫されて散々金を絞られた。飼い犬に手を噛まれた。その敵討ちをするから立ち会ってほしい」と相談していて、自分を脅迫している存在が誰なのかを知っていた。

黄金の矢の標的は当初奈津子だけだったがそれだけでは彼女が怪しむ可能性が高くなり、疑惑を避けるため緑ヶ丘の他の住人にもばらまいた。

黒い翼

「毒の矢」の後に連なるお話です。作中でも緑ヶ丘の黄金の矢の話が出てきており、石川と三原は緑ヶ丘の住人のため金田一を知っていました。

緋沙子が蓉子のすんでいる家に引っ越してきた記念と一年前に不可解な死を遂げた藤田蓉子の1周忌を兼ねて該当知人で集まった際に石川が金田一を招待して、そこから事件が始まります。

登場人物作中での立ち位置
金田一耕助私立探偵
原緋沙子人気女優
藤田貞子緋沙子の秘書。蓉子の妹。
藤田蓉子不可解な死を遂げた人気女優
三原達郎男優
石川賢三郎元俳優の監督
土屋順造蓉子のマネージャー。二人目の被害者。
丹羽はるみ三枚目女優
梶原修二新聞記者で緋沙子のマネジメントを担当している
小泉省吾緑ヶ丘の開業医で変死した蓉子の主治医。最初の被害者。
※黒い翼の犯人のネタバレ

犯人は藤田貞子です。これは取り違え殺人で、貞子は本当は緋沙子と梶原を狙うつもりで毒の入ったグラスを配りましたが、梶原がグラスの中にあった髪の毛(※間違えないための目印)に気づき、気味悪がって土屋と小泉のグラスと取り替えてしまい、二人は毒のグラスを飲んで死んでしまうのです。

「黒い翼の呪い」を始めたのも彼女ですが、それは嫌がらせではなく姉の死が梶原や緋沙子にあるのではと彼女なりに考えた結果、脅迫状もどきのチェインメールを蓉子のファンにばらまき、緋沙子たちに届くのを待ってその反応を伺うことにしたのです。このような回りくどい手を売ったのは、貞子の筆跡が緋沙子たちにバレているため、脅迫状を作ってもすぐにバレてしまうためです。

※黒い翼の犯人の動機

動機は姉・蓉子を強請り自殺にまで追い詰めた相手への復讐です。貞子は蓉子の死の原因が緋沙子と梶原にあるのではないかとずっと考えており(蓉子が死んだことで緋沙子が彼女のいたポストに収まり、売れっ子になった)、ずっと殺す機会を伺っていました。最終的に貞子は身投げします。

蓉子は、行きずりの男(犯罪者)と恋に落ち小泉の手で子供を生みました。その子供は里子に出されていますが小泉は嬰児殺しなどを仄めかして蓉子から子供と父親の存在を白状させます。その子供は緑ヶ丘に住むお金持ちの養子となっていて、蓉子は子供の本当の父親が獄中死した犯罪者だと先方にバラされたくなければ、小泉に強請られるのです。

そして進退窮まった蓉子は小泉を殺す計画を立てますが、土壇場で考えが変わり小泉に渡すはずだった毒の入ったグラスを飲み干して自殺します。彼女の死の間際には梶原と緋沙子がいましたが、直ぐ側に殺す相手(かつ脅迫相手)の小泉がいたため、蓉子は何も言えずにそのまま亡くなってしまうのです。

つまり犯人が復讐を完遂させた、ということになるんだね

金田一耕助短編集「毒の矢」のまとめ

基本的に時系列になっていない短編が多い金田一耕助シリーズですが、今回は毒の矢→黒い翼と時系列がしっかりできあがっているので、セットになったんだなと思いました。ミステリーやトリック要素が薄めですが、物語としての完成度も高く、一気読みしたい人にはおすすめです。ちなみにこの緑ヶ丘は他の短編集にもちょくちょく登場する地域だったりします。

金田一耕助シリーズレビューはこちらから

今回も画像はぱくたそさんよりお借りしました

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