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【ネタバレあり】横溝正史・長編「吸血蛾」を紹介

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なにわ男子の道枝さん主演による「金田一少年の事件簿」が始まりました。「じっちゃん」こと金田一耕助はどんな難事件を解いたのか気になる人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は金田一耕助長編の「吸血蛾(きゅうけつが)」を紹介します。「吸血蛾」は復刊されていない長編作品のひとつでしたが、この度2022年4月に無事復刊した長編です。ファッションモデルとデザイナーの話のため、働く女性が多く登場します。金田一耕助シリーズの中では最も多い被害者の数だと思われます。

ゆきんこ

通俗エログロ系に近いかな。紹介した作品だと「幽霊男」「悪魔の寵児」と似たテイストかも

「悪魔の寵児」のレビューはこちらから!

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目次

「吸血蛾」のあらすじ

木箱のふたをこじあけた瞬間、思わず縫い子たちは後退りした。箱の中には、乳房をえぐり取られ、その血溜まりに一匹の蛾を浮かべた若い女の死体が……。
服飾界の女王として君臨する美人デザイナー・浅茅文代(あさじふみよ)。だが、突然アトリエに死体入りの木箱が送り込まれたのを手始めに、彼女の大事な専属モデルたちが次々と殺害されていった。犯人の目的はなにか? そして、灰色ずくめの服装で暗躍する不気味な狼男とは何者?
全編にあふれる怪奇とロマン、横溝正史の傑作長編推理!

「吸血蛾」カバーより

初版は昭和50年8月。作中で「幽霊男」の話が出てくるため、その後の話になります。系列的には「幽霊男」「悪魔の寵児」に近いものです。被害者も多めです。(そして被害者側に落ち度がないのも共通している)

「吸血蛾」の登場人物

登場人物作中での活躍
金田一耕助私立探偵
狼男作中で登場する犯人の通称名。二重メガネで灰色のコートを着ている
浅茅文代服飾界の女王として君臨する人気デザイナー。「虹の会」という専属モデルチームを持つ。だいたいお前のせい
村越徹文代の弟子デザイナー。作中では「変性男子」と呼ばれる女性らしさを持つ美少年
川瀬三吾新東京日報記者でファッション部門を担当
増山半造文代が運営する服飾店「ブーケ」のオーナー
滝田加代子「虹の会」の一人で最年長美女モデル。最初の犠牲者
葛野多美子「虹の会」の一人でモデル。三番目の犠牲者。
赤松静江「虹の会」の一人でモデル。六番目の犠牲者。
有馬和子「虹の会」の一人でモデル。二番目の犠牲者。かなりグロい死に方で有名
日高ユリ「虹の会」の一人でモデル。八番目の犠牲者。
志賀由紀子「虹の会」の一人でモデル。七番目の犠牲者。
杉野弓子「虹の会」の一人でモデル。唯一の生存者
長岡秀二資本家で文代のパトロン。通称「パパ」と呼ばれている。ムッシューQ
ムッシューQ文代を恐喝する正体不明の男。五番目の犠牲者。正体は長岡秀二
江藤俊作昆虫館の主人で文代のファッションデザインを罵倒する毒舌な男。狼男のような犬歯がある。お前が最初から協力していればこんなことには……
伊吹徹三デザイナー兼画家。正体は安原敏介
日下田鶴子文代のライバルデザイナー。四番目の犠牲者。
安原敏介江藤の双子の弟。狼男のような犬歯がある

ひとまずはネタバレなしで記載しています。なお警察関係やほんの少ししか出てこない人物は割愛しました。
殺された被害者の多さも金田一耕助シリーズではトップクラスで、計十人が被害に遭っています。

はじまりはある男と村越徹の会話

吸血蛾のプロローグは村越徹と男が会話するところから始まります。
男は浅茅文代に用事があり、徹は文代の弟子でした。文代がその場に居ないことを聞いた男は、徹に「あるもの」を文代に渡してほしいと頼みます。渡してもいいが貴方の名前は、と徹が尋ねると男は口を開けて「こういう歯が生えている男だ」といって立ち去ります。その「あるもの」は齧られた痕がある林檎がはいった箱で、そのりんごを見た文代は左胸を抑えてうなだれました。

文代のデザインを罵倒する謎の男

数日後に文代が専属モデルチーム「虹の会」のメンバーとともに舞台にあがったファッションショーには、文代のデザインを罵るある男性がきていました。その男性は江藤俊作といいます。江藤俊作は武蔵野にある昆虫館のオーナーです。

なお文代はデザイナー以外にもモデルとして活躍していましたが、今回のショープログラムでは彼女は気分が悪いといって滝田加代子に自分の代役をお願いしています。

木箱から発見される一人目の被害者

そしてショーがおわり、打ち上げ後でタクシーを拾って帰る加代子に声をかける二人の男がいました。酒に酔っている加代子は男が江藤だと思い、手をふるい彼らともみ合います。しかし別の男に眠り薬をかがされたのか加代子は倒れてしまい、その彼女を抱えて男たちは車に乗り込みます。

後日、文代のアトリエに大きな木箱が届けられます。送り主は文代たちが懇意にしているマネキン店「M・C人形工房」でした。中を開けてみると、そこには滝田加代子の死体がありました。彼女の左胸はえぐり取られていて一匹の蛾が添えられています。

送り主もわかっていることから捜査はすぐに解決すると思われましたが、事件は難航します。文代のアトリエに届けられるはずのマネキンは別のアトリエに届けられていて、すり替えられていました。同時刻に謎の怪しい男が人形工房のマネキンの修理を依頼したため、その男が死体とマネキンをすり替えたのかと思い、素性を洗おうとしましたが男の素性はわからずじまいでした。

五色の「蛾」

加代子が殺されどうなっているのかと怯える「虹の会」のメンバー。そして今後のことを話し合おうと拠点にしている「黒猫」に集まったところ、有馬和子の姿が見えません。しかたなく彼女抜きでモデルたちは話し合い、多美子が提案した(「幽霊男」で登場した「マダムX」こと)三橋絹子の繋がりで金田一耕助に事件の解明を依頼することを決意します。

すると「虹の会」宛に送り主のない小包が届けられているとボーイから連絡がありました。中を開くと虹の五色に染まった蛾が標本されていました。しかし虹の会のモデルは六人いるはずです。そしてここに無い色は菫を担当した滝田加代子と緑を担当した有馬和子でした。

蛾という昆虫に詳しく文代への憎悪で思い当たるのは江藤だと川瀬は考えます。江藤が怪しいと考え、弓子とともに武蔵野の昆虫館に向かっていました(弓子は川瀬と帰る電車が同じだがついてきた)。その途中、細長い荷物を持った大柄な男たちとすれ違いますが、コートや手に血がついていることに気が付きます。歩いてきた方向から江藤の昆虫館が怪しいと考え、江藤と話しますが江藤は玄関口でシャットアウトします。

二人目の犠牲者

江藤に追い出された二人は警察に駆け込みますが、警官もやはり「江藤さんは変わり者だが人を殺すような人間じゃない」と話します。食い下がる二人に根負けし、見回るだけだからと警官は川瀬と共に昆虫館に向かいます。

江藤は留守で代わりに対応したのは女中でした。館内を歩いているうちに寝室で和子が着ていた服装が無造作に置かれているのを発見しますが、服には血がついていました。直後、叫び声が響きます。浴室で、両足を切断されて左胸をえぐられた裸の有馬和子が死んでいました。

ここで漸く金田一耕助が登場します。武蔵野の所轄から連絡を受けてやってきました。なお和子の体は素人が切り落としたとわかるほどに無惨でした。なお金田一は弓子を除いた四人が事務所に駆け込み、彼女たちが口々に話す内容を聞いて俄然興味を惹かれ、急ぎ警察に連絡して現場に向かったのです。

昆虫館を捜査しているなかで「開かずの間」という誰も入ったことがない部屋を開けました。すると中は洋裁に必要なミシンや裁ち絵やデザインパターンや型紙など、まるで洋裁師のアトリエのようでした。マネキンの顔は浅茅文代で、口づけをした唾液の痕がありました。

なにより部屋に無造作に置かれたデザインは、文代のライバル・日下田鶴子が発表したドレスデザインと全く同じものだったのです。

両足の行方

金田一たちは翌日文代から話を聞こうとするも、彼女は錯乱状態で話を聞ける状態ではありませんでした。医者が面会謝絶を希望しているため、仕方なく話を聞くのを取りやめます。次に怪しいのは彼女のライバル・田鶴子ですが彼女もまた留守でした。

そして空を見上げると人間の片足がバルーンで宙を浮いている、という前代未聞の事件が発生。当初は靴下の宣伝かと思っていましたがビルにいた人間が双眼鏡でみたところ、人間の足だとわかり周囲は騒然。都心の明るい時刻での出来事だったため、目撃者も多く周囲は野次馬だらけになります。その片足は死んだ有馬和子のものでした。

翌日、川瀬宛に奇妙な電話が届きます。川瀬はそれに従い、弓子とともに指定されたストリップ劇場にむかいます。見世物劇場では杉野弓子らが踊り子のの芸を楽しんでいました。すると人間の片足が舞台に現れ、まるで生きているかのようにひょこひょこあるきまわります。最初は人形の足だと思いましたが、血が滴り落ちていることから本物の人間の足だと判明、劇場は騒然大混乱と化します。その足も有馬和子のものでした。

支配人が足の糸が天井にあることから天井に行くとそこには一人の人形師がせっせと芸を演じていました。老人形師は一世を風靡した有名な人形師でしたが盲目でした。渡された足も人形のものだと信じており、天井裏まで運んだのも支配人と名乗る男だったと言います。

田鶴子の証言

バルーンの紐を放した男も、人形師を天井まで運んだ男も、弓子たちがすれ違った二人の男も、全く検討がつきません。しかし重要参考人の田鶴子が警察にやってきました。(なお田鶴子は川瀬に惚れているようで彼とそれ以外とで態度が急変する)

昆虫館から押収したドレスのデザイン図を見せると田鶴子の顔が強張りました。見覚えがあると聞くと彼女は自分のデザインを誰かが盗んだのではと証言します。服飾界も盗作・スパイがあるためできるだけ非公開にしているのだけど、と彼女はまるで誰かを彷彿とさせるように話しました。

浅茅文代と伊吹徹三

一方、文代のアトリエでは文代が正常を取り戻しました。しかし狼男がアトリエの倉庫に潜み、徹や縫い子を襲ってきました。応戦する徹でしたが、狼男は徹を突き飛ばし、文代がいる母屋に走ります。直後文代の叫び声が聞こえましたが、文代は九死に一生を得ていました。そして文代は金田一たちに協力することを決意します。

文代は「狼憑き」という伝承を知っているかと話し、自分はそれに呪われているのだといいます。文代はかつてパリで服飾の勉強をしており、そのときに「伊吹徹三」という男と懇意になり同棲していました。その伊吹という男は「ボヘミアン」と呼ばれる無国籍者で、日本人であるが戸籍上では死亡しているといい伊吹という名前も本名か怪しいようです。

伊吹は画家でした。そして文代を愛していますが愛情表現が乱暴で行為の最中に噛むことが多くなったと話します。甘咬みではなく本当に噛みちぎるような強い力で乳房を噛まれていたと文代は言います。そして旅行に行ったときに伊吹は狼に咬まれてしまいます。噛んだ狼は文代が護身用に持っていた拳銃で撃ち殺しており、その夜伊吹は狼になったように文代を襲いましたが伊吹は覚えていません。怖くなった文代は伊吹から逃げるようにすきを作って日本に戻ってきました。

しかし伊吹は事件密入国してまで文代を追い、彼女のアトリエまでつきとめ、ストーカーを続けました。伊吹とは数回あっただけですが文代は彼が住んでいるアパートを知っていました。伊吹から届いた手紙や彼の写真を文代は持っており、証拠として提出します。写真に映る伊吹は髪の色を除けば江藤とそっくりでした。

江藤と二人の共犯者

文代が警察に話している最中、江藤は伊吹が住んでいるアパートを訪れました。アパートの中は昆虫館の一室と同じように洋裁師のアトリエとなっておりデザイン画や型紙、ミシンが置かれています。

そして江藤が迎えたのは「ヒロさん」と「まあ坊」という二人の男。二人はヒロポン中毒で江藤に金で雇われており、彼らこそ、和子の両足を見世物のように晒した張本人でした。お金を渡したのち、江藤は「髪は黒く頬に傷がある自分の双子の弟、伊吹徹三を探してほしい」と二人に依頼します。二人はびっくりし、そして浅茅文代をかどわかして昆虫館につれてくるようにと依頼したのは江藤ではなく伊吹だとわかるのです。直後警察が追いかけてくるのを知り、三人は手慣れたように逃亡します。

駆けつけた金田一たちは伊吹のアパート内を捜索します。同じようにデザイン画がトレーシングペーパーに置かれていたりはられています。男の字で「春のカクテル・ドレス」と書かれているデザイン画を目にすると、弓子や川瀬は「伊吹という男は独創性の強いデザインセンスがある男だ」と称しました。

三人目と四人目の犠牲者

事件の渦中の関係者である「虹の会」メンバーはモデルの仕事があり、ファッションショーに参列することが決まっていました。その用意をしている途中、日下田鶴子デザインのドレスが発表されます。しかしそのドレスデザインは伊吹徹三のアパートで発見された「春のカクテル・ドレス」そのものだったのです。田鶴子がなにか知っていると思い、金田一たちは彼女を追求します。自分のデザインで江藤が盗んだという説ではなく、実は伊吹のデザインを田鶴子が盗用したのではないかという詰問に田鶴子は心底震え、何かを言おうとしていました。
しかしそこで事件が発生しました。狼男がファッションショー中の葛野多美子を殺したのです。

文代のデザインパートの大トリをつとめる多美子は奈落からせり上がってくるはずでした。しかしせり上がってきたのはおばけのような両足を開き両手を前に出して立っている彼女の姿。様子がおかしいとガヤ付くなか、最前列から「人殺しだ」だという声が響き、彼女が殺されていることが判明します。そもそ奈落のせり上げ担当者はニセ電話に呼ばれてしまい席を外し代った徹も何者かに眠り薬をかがされて倒れていました。
多美子の左胸もえぐられており、彼女のドレスには藍色の蛾が安全ピンで装着されていました。

三人ものモデルが犠牲になった虹の会メンバーや文代の周囲は騒然としてお通夜状態です。その直後田鶴子が楽屋の脱衣場で、ピストルで心臓を撃ち抜かれて殺されているのが発見されました。

五人目の犠牲者

実は文代は狼男の事件前から「ムッシューQ」となのる謎の男に脅されていました。彼が持つ封筒にはデザイン画が入っており、それを公表したくなければお金を持って指定の場所にこいというもの。自分の最大の秘密をばらされたくない文代はムッシューQに従い、お金を支払っては封筒を受け取っていました。そのお金はパトロンの長岡氏が出していました。今回もムッシューQに呼び出されていやいや脅迫に応じた文代ですが、彼の腕時計に違和感を持ちます。文代は彼を自分の知るある男だと思い、取引に応じず逃げ出します。

一人になったムッシューQに狼男が忍び寄ります。一声かけたのち、ピストルで撃ち殺しました。そして狼男はムッシューQの変装をほどき、彼の意外な正体に心底驚くのでした。

行方不明の三人

ムッシューQが殺され、その正体と文代との関係性に驚く金田一たち。そこに弓子から志賀由紀子・赤松静江・日高ユリの三人がアパートに戻っていないと連絡を受けます。警察の懸命の捜査の結果、三人をさらったのは「まあ坊」と「ヒロさん」の二人でした。しかしその後の連絡が一向にありません。

三人が行方不明になってから三週間近く経過した頃、事件は急転直下を迎えます。隅田川公園でほぼ裸の静江と由紀子とユリの死体が発見されたのです。

ゆきんこ

この後事件は意外な顛末を迎えます。

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「吸血蛾」のネタバレ

※※「狼男」の正体※※

杉野弓子を除く虹の会のモデル六人とムッシューQを殺害したのは「村越徹」で、日下田鶴子と伊吹徹三(安原敏介)を殺害したのは浅茅文代です。なお滝田加代子と有馬和子の死体処理をしたのは江藤俊作でした。徹と文代の二人は共犯して「狼男」という犯人を演じました。文代は最終的に舌をかんで自殺しますが徹は逮捕されます。

この事件、最初に殺されたのは「滝田加代子」ではなく狼男だと思われていた「伊吹徹三」です。伊吹が急に居なくなると江藤が不審がるため、暫く彼が生きているように風邪を引いたとごまかし、江藤に電話をかけて彼を様々なところに移動させます。

文代が日本で発表したデザインは全てパリで同棲していた伊吹のものでした。伊吹は文代のデザインセンスが貧弱なのを哀れに思い、彼女のために相当のデザインを作っていたそうです。伊吹と別れたのち日本に帰ってデザインを発表しても彼女には才能がないためすぐ枯渇します。そこに彼女を追ってきた伊吹と再会し、彼女は伊吹にデザインのゴーストライター的なことをやらせる代わりに自分の体を提供し愛人として繋がっていました。

なお文代は長岡を心から愛していました。長岡を自分のパトロンに繋ぎ止めていたい為、長岡との体の関係を続けながら伊吹にデザインを作らせてときには体を提供し、自分は服飾会の女王として君臨していたいと思っていました。

※「狼男」の動機

自分が憧れ、一生を託してわざわざ日下から鞍替えしてまで師事した文代のデザイナーの才能が総て伊吹徹三(安原敏介)のものであることを知り、落胆と同時に凄絶な憎悪が芽生え文代に復讐するため。文代の人生をめちゃくちゃにし、彼女の総てを壊そうとしたために彼女を取り巻くモデルも殺害しました。

冒頭、男(伊吹)から頼まれてあるものを文代に渡した際、文代が恐ろしく怯えたため気になって文代の後をつけたところ、文代が伊吹を殺害した所を目撃。その上伊吹が彼女のゴーストライターであることも知りました。そして徹は文代を巧みに説き伏せました

また金田一曰く「徹は殺人淫楽者の気があり、文代は虐めて怯えた顔をみたくなるような女だ」と称しています。つまり加代子以降のモデルも殺したのも、徹が殺人快楽の気持ちがあったが、文代が見せる怯えた表情が舌舐めずりをするような快楽だったということです。

※「ムッシューQ」の正体

文代を脅迫し金銭を要求している謎の男「ムッシューQ」の正体は、彼女のパトロン「長岡秀二」です。長岡は文代にデザイナーから足を洗ってほしいため、彼女に脅迫的な行為をしていました。

また日本に戻ってきた伊吹が生活を工面するためにオリジナルのデザイン画を売ったときそのデザイン画を買い取ったのが長岡でした。そのため長岡は彼女にデザインの才能がないことも勿論知っていました。

※江藤俊作の関わり

この事件をややこしくした張本人です。彼は自分の昆虫館で滝田加代子や有馬和子の死体を発見し、自分の弟がやったのだと思います。しかし既に弟の伊吹は文代たちによって殺されていました。

江藤俊作は、伊吹徹三(安原敏介)の双子の兄であり彼の天賦の才能を知っていました。江藤は、日本に突然戻ってきた自分の弟から文代とのデザイン関係のやりとりを聞き、仕方がないと自らの昆虫館の一部屋をアトリエに改造したり、アパートを借りて弟に提供しました。日本では安原は死んでいるため「伊吹徹三」という架空の名前を作り、アパートを借りました。アパートや昆虫館のアトリエで文代と伊吹は逢瀬し、昆虫館にいるときは江藤は伊吹の身代わりになってアパートにいきました。江藤は伊吹の癇癪を知っているため、なんとかして文代にデザイナーの道を断ってもらいたいとファッションショーに言っては文代の悪口を言い彼女の名声を下げる活動をしていました。

静江たち三人をまあ坊たちに命じてさらったのも、弟の伊吹から三人を守るためでした。昆虫館でもないぜんぜん違う倉庫に匿い、食事を出して監視していました。しかし徹が三人を見つけて殺してしまいます。

「吸血蛾」のまとめ

世間では賛否両論と言うか、ぐだついた展開が多くただただモデルが殺されまくること&犯人の動機がひどいからあまりよい評価がないこの作品。しかし幽霊男の流れをくんでいるとわかると「なるほど」と思ってくれる人もいると感じます。

横溝正史先生の読みやすい文体のため、内容もスラスラと入ってきます。トリックというトリックはなく、ただひたすら犯人に振り回される警察と金田一という話ですが、有名な田舎の長編作品では見られない都会の事件のため、気になった方は是非とも読んでみてはいかがでしょうか。

長らく復刊されていませんでしたが横溝正史先生生誕120年記念で2022年4月に復刊されました。それ以外にも1956年に池部良氏主演・中川信夫監督の「吸血蛾」の映画があります。こちらの映画は原作とは違う顛末を迎えるので気になる方はぜひ。

\ 通常4,950円! /

他の長編シリーズはこちら

今回の写真素材もぱくたそよりお借りしました

©フリー素材サイト「ぱくたそ」

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