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【ネタバレあり】横溝正史・金田一耕助シリーズ!映像化が難しい3つの長編を紹介

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たまには趣向を変えて。
ミステリーの大家・横溝正史氏の金田一耕助といえば知らぬ人は知らぬ作品。長編の多くは映画化・TVドラマ化していますがなかには内容が色々とやばすぎて現代において映像化できないと言われた作品があります。まだ規制が緩かった1960年~1980年代でも映像化できなかったのですから、さらに規制が厳しい2020年以降となっては映像化はほぼ不可能でしょう。

ゆきんこ

どの作品も通俗要素が強い&都会の話なので、金田一耕助=田舎の因習モノと思っている人が読むとびっくりしそう

内容がエキセントリックというかエログロ要素が強くてお茶の間での放映不可。そんな3つの長編作品を紹介します。
「幽霊男」は1954年に河津清三郎氏主演で映画化、「白と黒」は1962年に船山裕二氏主演で二時間ドラマ化しています。さすがに長すぎるのでかなり省略されていますが……。

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目次

幽霊男

神田神保町の裏通りにあるヌードモデル仲介業「共栄美術倶楽部」に初めて現れた異相の男、その名も佐川幽霊男。彼の依頼を受けたモデルが、ホテルの浴槽の湯の中で殺され、そしてさらに……。
猟奇マニアたちの秘密の巣でもあったその倶楽部に金田一探偵が登場。右往左往しながらも、欲望に溺れて堕ちたマニアたちの犯罪を鮮やかに解決!妖気漂う原色怪奇まんだら。

角川文庫「幽霊男」金田一耕助ファイル10より

出版は1974年発行ですが連載は1954年です。映像化しにくい原因としては通俗要素多めなことでしょうか。「田舎!」「因習!」「遺産相続!」とかではなく犯人の動機も下記に書いている内容なので、映像にしにくいのかもしれません。ちなみに作中で月琴島の話が出てくるので、少なくともこの事件は「女王蜂」より後の事件になります。
犯罪トリックは「実行犯が別にいる」「被害者が犯人に協力」「被害者が荷物移動」といったもの。当たり前のように全裸シーン(ヌードモデル)や死体損壊(いわゆるバラバラ●人)がでてくるので、これも映像化が難しい理由なのかも。

登場人物作中での立ち位置
金田一耕助私立探偵(今回ボーイのコスプレもする)
佐川幽霊男事件の犯人と呼ばれる男。誰かの変装。
宮川美津子ヌードモデルで四人目の被害者。
西川鮎子ヌードモデルで五人目の被害者。
小林恵子ヌードモデルで最初の被害者。
武智マリヌードモデルで三人目の被害者。
都築貞子ヌードモデルで二人目の被害者。
建部健三共栄美術倶楽部の常連の新聞記者。
菊池陽介共栄美術倶楽部の常任の助教授。
小林浩吉最初の犠牲者・小林恵子の弟。
加納三作共栄美術倶楽部の常連の外科医。
河野十吉蝋人形職人。
三橋絹子ミモザの女主人で斜陽族の令嬢。
※「幽霊男」の犯人のネタバレ注意

佐川幽霊男(さがわゆれお)はもちろん「犯人」の変装。
この事件には、元々の「犯人」とその犯人に成りすまして殺人を実行していた「真犯人」の二人が存在するパターンで、金田一探偵は「犯人」の身内に依頼されて事件の解決に乗り出している。犯人は建部健三、真犯人は菊池陽介です。この二人はこれまでの好青年から違う意味での化けの皮がはがれるので是非とも読んでほしい。

この真犯人(※菊池)は「横溝正史作品ゲス選挙」で上位に入るほどの悪足掻きっぷりで有名。なにせ警察に現行犯逮捕されても「ぼくはしらん……ぼくはなにもしりません……どうしてぼくに手錠をかけたりするんです、ぼくは……ぼくは……」と白を切り続け、その罪を別の人間に擦り付けようとしたため、等々力警部からも「そのけだものをはやくむこうへつれていけ」といわれるほど。

※「幽霊男」の犯行の動機

犯人(※建部)の動機は「劣等感コンプレックス」――もとい「人に認められたいという願望と、今まで自分を馬鹿にし無視してきた社会に対する復讐心」とそこから生じる「特種を自作自演しそれをスクープして世間にあっと言わせたい」という承認欲求。
建部は大学時代演劇部に所属し老け役がうまい名優だった。大学卒業後、父親が専務を務める某新聞社に入社するが記者としては無能で、しかもコネ入社という形で入社しているため安易にクビにすることもできず、親の七光りと呼ばれて同僚から内心軽蔑されていた。それを知っていた建部の劣等感が積もり積もって爆発したというもの。

菊池の動機は「かつて自分の妻だった美しい女性(絹子)とその愛人(加納)に対する嫉妬復讐、および快楽殺人。自分が安全地帯にいるところで行う殺人ほど刺激的なものはないという理由でもあり、自称ヌード写真家でもあったので死亡した被害者の死体ヌード写真を撮る自称サディスト。

ゆきんこ

幽霊男は長編だし角川文庫で定期的に復刊されているので気になった人は読んでみよう。

白と黒

平和そのものに見えた団地内に、突如怪文書が横行。プライバシーを暴露する陰険な内容に、住民たちは旋律を覚える。その矢先、団地のダスト・シュートから真っ黒なタールにまみれた女の死体が発見された。眼前で起きた恐ろしい殺人に団地の人々の恐怖は頂点に達する……。
謎のことば「白と黒」の持つ意味とは? 団地という現代都市生活特融の複雑な人間関係の軋轢と、葛藤から生じる事件に金田一耕助が挑戦する!!

角川文庫「白と黒」金田一耕助ファイル18より

金田一作品としてはかなり後期のタイトルです(この後に悪霊島、病院坂と続く)。「田舎=金田一」と思われがちですが今回の舞台は「団地」です。この作品は1960年代に一度映像化されたっきりです。映像化しやすい設定なんですが、逆に映像化できない理由は「動機」というかとある団体がうるさそう、というのもあるから……ですかね。でも中盤の中だるみを除けば読んでいて不快感はないんですよね。やっぱさすがだなあと思います。
団地が舞台ということもあり登場人物も八つ墓村並みに多いこと、そしてタールぶっかけという類を見ない死体再現が難しいのも、映像化が難しい理由の一つと言われてます。あと犯人が若いこと

石炭,石油,木材のような炭素化合物を熱分解するとき残留する黒ないし褐色の油状瀝青物質の総称。石炭の乾留で得られるコールタールはその代表的なものである。再蒸留して各成分に分けて合成化学工業の原料に使われるほか,そのままで塗料,燃料にも使われる。コールタールのほかに,頁 (けつ) 岩タール,木タール,オイルガスタール (石油のガス化副産物) ,石油タールなどがある。

コトバンク「タール」より

トリックは「顔のない死体」「殺人犯とその後の死体遺棄の担当が違う」などあげられます。というか十中八九「顔のない死体」かと。

登場人物作中での立ち位置
金田一耕助私立探偵
S・Y氏金田一の友人で、彼の事件を小説にしている作家。
緒方順子事件の依頼者で怪文書の被害者。かつて「ハルミ」と呼ばれたホステス。
戸田京美怪文書の被害者で自殺未遂をしている。義理の伯父と二人暮らし
須藤達雄順子の旦那。事件の二番目の被害者。
片桐恒子洋裁店「タンポポ」のマダム。事件の最初の被害者。
根津伍市日の出団地の管理人の一人。元職業軍人。
宮本タマキタンポポの針子。事件の三番目の被害者。
榎本謙作スターの卵。
姫野三太スターの卵。
伊丹大輔タンポポを含む商店街の家主で近辺の大地主。
水島浩三落ち目の絵描き。元売れっ子画家。ぶっちゃけ元凶はお前だよ
河村松江タンポポの通い女中(アルバイト)
一柳忠彦前代議士。先妻との娘勝子がいる。
根津由起子根津の娘。
ジョー根津が飼っているカラス。事件の最大の功労者。
※「白と黒」の犯人のネタバレ

三人を殺した犯人は戸田京美です。実行犯は彼女ですが、そのきっかけを作ったのは水島浩三で、死体遺棄をしたのは根津伍市です。水島は逃亡しますが最終的に鉄道に飛び込み意識不明に陥ります。

京美は、まず恒子を殺すため、隙を作るために恒子をベッドに誘惑し情交を行った後、殺しますが酒に酔った達雄が殴りこんできたため別部屋に逃げます。しかし達雄が追いかけてきたため、千枚通しで心臓を一突き。タマキを殺したのは「白と黒」の意味を金田一に教えようとしたからです。

そもそも片桐恒子は偽名で「死ぬときはあなたの妻だとわからないように死ぬ」と前夫に約束していたためです(だから写真もない)。根津は彼女(恒子)の旦那が所属していた部隊長でその約束を知っていたため、義理を果たすために遺体を損傷しました。なお死体現場には恒子以外に達雄もいたため、根津は恒子をタールに、達雄を池の中にいれました。ちなみに根津はヘロイン中毒です。

※「白と黒」の犯人の動機(ネタバレ)

姫野に送り付けられた京美を中傷する怪文書が発端です。この怪文書は下記の怪文書の騒ぎを知った水島が嫌がらせで作成し、京美を中傷する内容を榎本と姫野それぞれに送ったところ、榎本はそれを捨てましたが姫野は騒ぎにしてしまった。京美はこの怪文書を、同性の恋人の恒子が自分と榎本を引き裂くために作ったのではないかと思い凶行に走ったのが始まりでした。若者特有の集団行動心理で、榎本が怪文書騒ぎから京美を疎外していることを知った彼女の絶望(自分だけ除け者にされた)も一つの原因といえます。

京美には血の繋がりのない伯父がいて、伯母は戦争で亡くなりました。伯父の再婚相手がかなり若い女性でもあり、思春期特有の「居場所を取られる」とヒステリーを起こし再婚を破断させようと、自分と義理の伯父が肉体関係にあることを示唆した怪文書を作成し、女性の兄に送ったところ騒ぎになりました。

実は表題にもなっている「白と黒」は同性愛(白は女性同士、黒は男性同士)を意味します。全部読んでタイトルの意味がわかると「そういうことか」となります。

悪魔の寵児

胸をはだけ、乳房をむき出しに折り重なって発見された男女。すでに、女は息たえ、白い肌には不気味な死斑が浮き出ていた……。
情死を暗示する奇妙な挨拶状を遺して死んだ美しい人妻。不倫の恋の清算か? 闇行為で財を成したしたたかな実業家の周辺につぎつぎに起こる猟奇殺人事件!
ジメジメと湿った雨の日に、亡霊のようにあらわれる<雨男>、消えた死体の謎。名探偵金田一耕助の鮮やかな推理の冴え!

角川文庫「悪魔の寵児」より

金田一耕助作品では最もエログロ要素が強くアウトな作品。映像化できない理由は「死体凌●」「情交のポーズで死んでいる」「SM描写がある」「寝取り寝取られ描写がある」「エログロ」などポルノ映画並みに危ないからだとおもう。ただミステリーとしてはしっかりと出来上がっているため、犯人は果たして誰だろうと予測できる展開が続きます。
ストーリーテラーが金田一耕助ではなく「水上三太」という新聞記者なのも特徴で、被害者が発見される際、男女一対で発見されています。
犯罪トリックとしては「共犯」「被害者の名前を使用」「被害者を操って犯罪に加担」など。私はかなり好きですがとにかく好みが分かれる作品の一つだと思います。

単独レビューはこちら

登場人物作中での立ち位置
金田一耕助私立探偵
雨男今回の事件の犯人。悪魔の寵児と後世で呼ばれる
水上三太新聞記者。早苗に惚れている
風間欣吾成り上がり実業家。マジで全部お前のせい。
風間美樹子欣吾の本妻で華族・五藤家の娘。元有島子爵の妻で最初の犠牲者
城妙子欣吾の愛人でバーのマダム。六番目の犠牲者。
保坂君代欣吾の愛人で美容院経営者。二人目の犠牲者。
宮武益枝欣吾の愛人で洋裁店の経営者。三人目の犠牲者。
有島忠弘元華族で斜陽族。美樹子の先夫。六番目の犠牲者。
石川宏美樹子のツバメと呼ばれる若手画家で心中未遂で入院中。風間欣吾と及川澄子の婚外子。
石川早苗妙子のバーで働くホステスで欣吾の愛人。
望月種子欣吾の元妻。蝋人形屋敷を運営。サド。五人目の犠牲者。
黒田亀吉腕のいい人形作り師で種子の愛人。人形職人。マゾ。四人目の犠牲者。
湯浅朱美銀幕の大スターで欣吾の最後の愛人。
及川澄子欣吾が最初に付き合った女中で既に亡くなっている。
※「悪魔の寵児」の犯人のネタバレ

ウィキペディアに全部書いてあるからそれを見たほうが早いといってはいけない。
犯人は一人ではなく二人でカップル、そして事件当初に心中未遂をしつつ生き残っている「石川宏」と、彼の義妹で作中で最初から最後まで出番がある「石川早苗」が犯人。二人は戸籍上では兄妹だが実質的な血の繋がりは従弟にあたる(宏は早苗の伯母・及川澄子と風間欣吾の子)。また彼女たちに「神託」という形で欣吾への復讐心を煽られ操られて被害者を攫ったりした「望月種子」も犯人の一人といえる。

被害者の死体が男女一対で発見される(※いわゆるセック●シーンの隠喩)のもこの事件の特徴だが、その組み合わせは大体こんな感じ。だから余計に猟奇系とか通俗とかポルノとか呼ばれる。
一番目……石川宏(未遂)と風間美樹子
二番目……風間欣吾の人形と保坂君代
三番目……黒田亀吉と宮武益枝
四番目……有島忠弘と城妙子

※「悪魔の寵児」の犯行の動機(ネタバレあり)

欣吾の一人の愛人に過ぎない早苗が、ライバルの愛人を全員蹴落として自分が欣吾の本妻になりたかったから。そして血縁上は欣吾のただ一人の「子供(※風間欣吾と及川澄子の間にできた子)」なのにそれを証明する人間も手だてもないことから(認知すらされていない)、彼の遺産が請求できないと知ったもう一人の犯人・宏が絶望して、共犯者の早苗と結託して彼の遺産相続や関係者を殺し早苗を欣吾の妻にして相続させようとした。

渦中の事件の中心人物である「風間欣吾」が全ての原因だが本人にその自覚はない。戦前、風間がのし上がるために当時付き合った女中を捨て奉公先の家の娘と結婚したこと、そしてその女中をまったく覚えていなかった。

犯人(特に早苗)が焦った最後のきっかけは欣吾の愛人の朱美が彼の子を妊娠したから。だからこそ早苗と一緒に見つかる欣吾の●液が入ったアンプルの存在が生々しい(使用用途を想像できるだけに)

ゆきんこ

後味の悪さも人によっては随一だとおもう。ほとんど罪のない人間が殺されているしね。でも私はこれが一番好きです。

映像化に恵まれない金田一シリーズ三選のまとめ

ぱくたそからお借りしました

金田一耕助シリーズの長編タイトルでありながら映像化に恵まれない不遇の三作品を紹介しました。映像化されない原因の多くは「世間が抱えるイメージとかけ離れる」「規制が入る」「時代にそぐわない描写がある」といった映像を作成する側の問題といえます。
横溝正史先生ということもあり、どのタイトルも読みやすく時代考証を考えると考察も深まるので、映画やドラマでしか見たことないけど……とおもい、原作が気になった方はぜひとも読んでみてはいかがでしょう。長編は長いから、と思う方は短編集から入ってみてもいいと思います。

長編はこちらから

短編集はこちらから

ゆきんこ

NHKの映像化作品はどれも面白いからこの方向性でやってほしいな。貸しボートとか黒欄姫とか映像化は初めてだったもんね。凄くよかった

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